飲酒運転の罰金と違反点数|罰則を受けるのは運転手だけじゃない!
「飲酒運転」が犯罪であることは多くの人が知っているはずですが、残念ながら完全に撲滅するまでには至っていません。飲酒運転による大事故が起きるたびに厳罰化されているにもかかわらず、「自分は大丈夫」「少しだけなら平気」などと安易に考えて、ついアルコールが入った状態でハンドルを握るドライバーが少なからずいることも事実です。今回は、免許を取ったばかりの人に向けて、あらためて飲酒運転の罰金(反則金)や違反点数について詳しくご説明します。
飲酒運転の2つの区分
ひと口に「飲酒運転」といっても、厳密には2つに分類されます。それぞれの特徴を見てみましょう。
飲酒運転の区分
道路交通法にはそもそも「飲酒運転」という呼び方はなく、正式には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」があります。では、酒気帯び運転と酒酔い運転には、どんな違いがあるのでしょうか。
酒気帯び運転
呼気中のアルコール量が、「0.15 ミリグラム/リットル以上」の状態で車の運転をした場合の違反です。さらに、「0.15~0.25ミリグラム/リットル」と「0.25ミリグラム/リットル以上」の2段階で分けられています。
ここで注意したいのが、呼気中のアルコール量が「0.15 ミリグラム/リットル以下」であれば違反にならない、というわけではないという点です。たとえ基準値以下であっても、ドライバー自身がアルコールに弱く、運転に支障をきたしていた場合には、酒酔い運転と判断されることがあります。
酒酔い運転
飲酒によって正常な動作や判断ができないおそれがある状態で運転した場合は、「酒酔い運転」になります。飲んだお酒の量や呼気中のアルコール量とは無関係です。前述のとおり、呼気中のアルコール量が「0.15 ミリグラム/リットル以下」であっても、飲酒が原因で交通事故を起こしたら「酒酔い運転」に該当します。
飲酒運転の危険性
お酒(アルコール)が体内に入ると、血中のアルコール濃度が高まります。その結果、中枢神経がまひして、運動機能の低下をもたらします。このような状態で車の運転をすると、ブレーキやハンドルの操作に遅れが生じることがあります。
次に、理性や自制心が低下する症状が見られます。すると、運転が乱暴になったり、スピードを出しすぎたりという危険行為につながります。
また、飲酒によって動体視力が落ちたり、視野が狭くなったりすることもあります。この結果、認知能力や状況判断能力が低下し、やはりハンドルやブレーキ操作が遅れます。
アルコールは集中力低下の原因にもなります。集中力が落ちると注意力が散漫になり、歩行者や障害物などへの気づきが遅れます。
さらには体の平衡感覚が鈍った結果、停止線やセンターラインからはみ出してしまうこともあります。
このように、お酒を飲んで車を運転すると、普段は当たり前にできる動作の反応が鈍くなったり、体や精神状態の制御が難しくなったりします。飲酒運転による死亡事故が後を絶たないのは、「少しの飲酒なら運転に影響がない」という安易な考えを持つ人がいるためです。実際は、ほんの少量のアルコールでも非常に危険であることを強く認識しましょう。
酒酔い運転で捕まった場合の罰則
酒酔い運転については、2007年9月19日の道路交通法改正施行後、処分が厳しくなりました。ここでは酒酔い運転の罰則について詳しくご説明します。
運転者への罰則
道路交通法では、違反した場合は「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」と定められています。また、違反点数は35点で即座に免許取り消しとなり、3年間運転免許を取ることができません。さらに、もし酒酔い運転で死傷事件を起こした場合、刑法では2つの刑罰が規定されています。
自動車運転過失致死傷罪
1つ目は「自動車運転過失致死傷罪」です。車の運転に必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に適用されます。罰則の内容は「7年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金」と決まっています。
危険運転致死傷罪
2つ目は「危険運転致死傷罪」です。アルコールや薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で車を運転した場合に適用されます。負傷者を出した場合は「15年以下の懲役」、死亡者を出した場合には、「1年以上20年以下の有期懲役」となります。「懲役20年」は殺人と同程度の罪であり、かなりの重罪といえます。
酒酔い運転が発覚した後の流れ
逮捕後、まずは警察による捜査が行われます。警察による捜査は逮捕後48時間以内と定められており、捜査後は検察に送られます。それから24時間以内に、検察官から被疑者の処遇が決定されます。
処遇は被害状況の内容によって異なり、事故が起きているか否かが一つの判断基準となります。事故が起きた場合は、被害者のけがの程度・運転者のアルコールの量・運転者の前科の有無などによって、勾留の請求か、公訴の提起か、被疑者を釈放するかが決められます。通常、飲酒運転で逮捕された場合は、公訴提起することを前提に勾留請求されるのが一般的です。
刑事事件と認定されて公判請求されると、裁判を受ける必要があります。判決によっては、懲役刑を求刑される場合があります。
もちろん、事故になっておらず、被疑者に前科もなく、罪を認めて深く反省している場合などであれば、罰金刑で済むこともあります。
車両提供者・同乗者・酒類提供者への罰則
運転者が酒酔い運転で捕まった場合、車両提供者の罰則は「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」と道路交通法で決まっています。つまり、実際に酒酔い運転していたドライバーと同じ罰則が科せられるということです。
また、同乗者や酒類提供者にも「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。
このように酒酔い運転は、実際に車を運転していた人だけではなく、車を貸した人や同乗者、お酒を提供した人も刑罰を受けることになります。ドライバーの飲酒を知らずに乗っただけでは該当しませんが、ドライバーが飲酒したことを知った上で車に同乗したり、運転を依頼したりすれば、厳しい罪に問われます。
酒気帯び運転で捕まった場合の罰則
酒気帯び運転も厳しく罰せられます。ただ、初犯であれば略式裁判となり、罰金のみで済むケースもあります。ここでは、酒気帯び運転の罰則についてお伝えします。
運転者への罰則
道路交通法では、呼気中のアルコール量が「0.25ミリグラム/リットル以上」の場合は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」で違反点数は25点です。また、「0.15~0.25ミリグラム/リットル」の場合は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」で違反点数は13点となります。
違反点数が25点なら即座に免許取り消しとなり、2年間運転免許を取得できません。また、違反点数が13点のときは90日間の免許停止となります。
もし、酒気帯び運転で事故を起こした場合は、酒酔い運転と同じく「自動車運転過失致死傷罪」と「危険運転致死傷罪」の2つの刑罰のいずれかによって罰せられます。
しかし、初犯かつアルコール量が少なければ、逮捕されないケースもあります。身柄は拘束されず、通常の生活を送りながら、出頭要請をされたときのみ捜査に協力します。一般的には交通違反として処理され、書類審査だけの略式起訴となるため、罰金刑となるケースも多々あります。しかし、前科があったり人身事故を起こしたりした場合は、逮捕・勾留される可能性があります。
酒気帯び運転で逮捕された後の処遇も、ケースによって異なります。初犯であっても、被害者が死亡したり大きなけがをしたりしていれば、懲役刑となる可能性があるでしょう。一方、被害が軽く被疑者が深く反省しているときは、罰金刑や執行猶予付きの判決が出るケースもあります。
車両提供者・同乗者・酒類提供者への罰則
運転者が酒気帯び運転で捕まった場合、車両提供者の罰則は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」と道路交通法で定められています。つまり、酒酔い運転と同様、車両提供者に科せられるのは同じ内容の罰則です。また、同乗者や酒類提供者にも「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。
飲酒運転が厳罰化されてきた理由
酒酔い運転および酒気帯び運転の罰則は、なぜこれほどまでに厳罰化したのでしょうか。その理由を解説します。
厳罰化の流れ
1999年、東京都世田谷区の東名高速上りで、飲酒運転のトラックが乗用車に追突するという事故が発生し、乗用車に乗っていた幼児2人が焼死する事件がありました。
また、2000年には、神奈川県で飲酒および無免許運転をしていた乗用車が検問から逃亡している最中に歩道へ乗り上げ、歩行中の大学生2人に衝突して死亡させる交通事故が発生しました。しかし、危険運転致死傷罪がなかった当時は、どのような交通事故であっても、すべて業務上過失致死傷罪が適用されており、最高刑でも懲役5年でした。そのため、判決を不服とした被害者遺族が街頭での署名運動を行ったことなどがきっかけとなり、法改正へとつながりました。
2001年、東名用賀事故の犠牲者の命日であった11月28日に刑法改正案が国会で可決、危険運転致死傷罪が成立し、同年12月25日に施行されました。
翌2002年には、道路交通法の改正によって酒気帯び運転の懲役の上限が3カ月から1年に引き上げられ、違反点数に関しても大幅に増加されることとなりました。
その後、2006年に福岡市職員が飲酒運転で車に追突し、幼児3人を死亡させるという事件が発生したことをきっかけに、2007年に道路交通法が改正され、酒気帯び運転は最高3年の懲役となりました。その際、運転者に酒を提供した人に対しても懲役や罰金が科される酒類提供罪が盛り込まれました。さらに同年、自動車運転過失致死傷罪が新設されました。
2009年にはさらに厳罰化が進み、酒気帯び運転でアルコール濃度が呼気1リットルあたり0.25ミリグラム以上であれば、免許が取り消されることになりました。
2014年5月には、人を死傷させる事故に関する自動車運転死傷行為処罰法が施行されました。これは、2011年に運転者のてんかんの発作が原因で起きた、栃木県鹿沼市のクレーン車暴走事故を契機に、被害者遺族らの要望のもと、危険運転致死傷罪の適用条件の範囲を拡大する動きが生まれたのが発端です。薬物などの使用により運転に支障が生じるおそれがある人や、発作が起きるおそれがあるてんかん患者、自賠責保険の未加入者など、事故に対する意識が低い人も危険運転行為に含まれることになりました。
飲酒運転による事故の例
アルコールは少量でも、脳の機能をまひさせます。普段は問題なく通っているカーブを曲がりきれなかったり、信号を無視して対向車に衝突したりといった事故を引き起こす可能性があります。
警察庁の発表しているデータによると、平成28年の飲酒運転の死亡事故率は、飲酒なしに比べて約8.4倍に上りました。さらに酒酔い運転の死亡事故率は、飲酒なしの場合の約17.0倍です。
また、飲酒運転による死亡事故の多くは単独で起こり、運転者や同乗者が死亡する事例がほとんどです。一方で、死亡事故のうち約25%は第三者を死亡させているというデータもあります。
※参考:警察庁「みんなで守る『飲酒運転を絶対にしない、させない』」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/insyu/info.html
この記事のまとめ
飲酒運転は絶対にしない、させないという決意を
飲酒運転が原因の交通事故は、幾度も起こる痛ましい死亡事故が契機となり、少しずつ厳罰化されてきました。その結果、飲酒運転による事故は年々減少していますが、根絶には至っておらず、悲惨な事故は今も起きています。ドライバーはもちろん、その周囲の人々も「飲酒運転を絶対にしない、させない」という強い意識を持つことが求められています。
飲酒運転は自身の強い意志で避けられます。一時の誘惑で事故を起こせば、被害者はもちろん、会社や家族などにも多大な迷惑がかかります。また、人生の大切な時間を刑務所で過ごすことにもなりかねません。ドライバーとして責任ある行動をとり、安全運転を心がけましょう。